ほんのむし。

読んだ小説の紹介2割(ネタバレなし)、小説で動かされた心情と日常を8割で描く、平凡なブログ。

[読了]高校入試

『高校入試』 湊かなえ


湊かなえさんの文庫化新作、高校入試を早速読みました。

ネット掲示板で書かれていく言葉と、各登場人物の見ている景色、想いが交互に描かれ、登場人物も多いことから少し前半は混乱しました。
比較的多い登場人物で、何度か読み直しながら読み進めていったので、自分の中で人物像が次第に描けるようになっていたのに、、

それでも、湊かなえさんの鮮やかな伏線や結末には全く気づけなかった。悔しいー。

田舎においてはどの大学、どの就職先よりも、地元の公立高校の偏差値で優秀かのレッテルが貼られます。
わたしも田舎出身であるため、全く同じ環境だったことを思い出しました。
必死で受験勉強してきて、この小説同様、人生を決める日がまさに高校入試。
でも実は一番大事なのは、入学した後の高校生活。
なんとか入学できたけど、周りの優秀さに圧倒され、劣等感を感じ、高校に行かなくなる。。そんな人をたくさん見たのも、高校生活でした。
高校入試という制度はもちろんのこと、どう生きていきたいかを考える環境に、高校がなれば良いのになぁと本作を読んで思いました。

[読了]さまよう刃

さまよう刃東野圭吾

東野さん作品は思い出せば約10年前、
『時生』『変身』など、読みふけっていました。

この度、知人が引っ越すとのことで
古本をたくさん貰い、久々に東野さん作品を手にしました。

本作は、犯罪に手を貸した少年と、被害者の父親、そして若手の警察が主な登場人物。

この作品の中で訴えかけられる、
罰は誰のためのものか?
なぜ、加害者の未来を守るのか?
被害者のことは顧みないのか?
という被害者の悲痛さが随所にあります。
もちろん、警察側も自分はどちらを守る立場なのかと葛藤していて。
単なるミステリーではなく、人間の弱さや強さ、迷い、葛藤がありのまま描かれているのが東野さん作品の良さだなぁと再認識しました。


一度犯罪を犯したものは、更生なんてできず、また犯罪を犯すのか?
これに関しては定量的なデータ(再犯率)など調査します。
・・きっと犯罪の種類によっても違うのだろうけど。

そしてラストの結末は、それまでの伏線が上手すぎて全く気づかなかった!!

直近の作品は読んでいないので、また東野ワールドに浸ろうかと思います。

さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃 (角川文庫)


[読了]ハピネス

『ハピネス』  桐野夏生

桐野さん作品、初めて読みました。

ハピネス=幸せ

幸せって、人それぞれ違うんですよね。
幸せは、誰かと比べるものではなくて、自分が納得できる、自信持って生きていられることが幸せなんです。

本作は、人からどう見られているか、ということばかり気にしていて、自分に自信を持てない30代子持ち主婦が、過去の過ちや人間関係に戸惑い、向き合いながら、次第に意志を持って自分なりの幸せの一歩を進める話。

プライドとか、過去とか、意地とか・・
歳をとればとるほど、融通が利かなくなって、自分のステータスを崩せなくて。
悩みも真実も隠して演じる、それも大人なのかな、と度々思いました。

これから自分も働き続けながら子供をもうけ、育てていく。
関わる社会が、会社だけじゃなく子供のコミュニティまで広がって、いろんな自分が形成されていくのだろう。
それが楽しみでもあり、不安でもある。でも、なるようになるし、やっぱり

幸せは自分で決めるしかないですものね!

ハピネス (光文社文庫)

ハピネス (光文社文庫)


[読了]ぼくは明日、昨日のきみとデートする

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文

ネタバレは書きません、が、
この小説を読み、2回号泣しました。

タイトルから察せられるとおりの単なるパラレルワールドの話ではありません。

とってもピュアな恋をして、想いが通じて、恋人になって・・その瞬間、瞬間の愛しさが丁寧に描かれています。
そのときに知る、自分たちの運命を呪い、でもそれを乗り越えたときに、さらに相手が愛しくて、愛しくてたまらなくなる。

自分の今隣にいる人がどれだけかけがえのない存在で、想い合えること、一緒に歩んでいけることがどれだけ幸せかを強く、強く、感じるのです。

二人の主人公の純粋さと、一緒に描かれる澄んだ景色が、切なさを助長させる、切なくて、美しい作品です。


[読了]少女

『少女』 湊かなえ

湊さんの作品は、本作以外はすべて読みました。
といっても文庫派なため、一番直近では『望郷』を読んだまでなのですが。

望郷は、作者が湊かなえさんということを忘れてしまいそうなくらい、ミステリー要素が前面に出ていない作品集でした。
それでいて伏線が張り巡らされているから、最後はやっぱり『あぁ、湊さんだ。』と思い返すのです。

そんな湊さんの初期の方の作品で唯一、読み逃していたのが『少女』。

望郷の後だから余計に、湊さん節を頭から感じます。
自分の存在する世界以外の景色が見えていない若かりし頃、みんなこうやって『何者にもなれない自分』と戦って、自分だけは人と違う、と必死にもがいていたのかな、と過去を振り返る。

狂気に満ちた気持ちなど、抱いた記憶はないけれど、間違いなく、みんなと一緒じゃない自分になりたかったという点は共感できる。
『望郷』もそうでしたが、田舎育ちの人なら少なからず、湊さんの作品に共感できる部分は多いはず。

少し感動も含まれて、
そこ繋がってたの?!という吃驚もある。
死をテーマにしてる故に冷ややかな切り口と感じるかもしれないですが、湊さんワールドを経験できる作品のひとつです。

少女 (双葉文庫)

少女 (双葉文庫)


[読了]マタニティ・グレイ

石田衣良さんのマタニティ・グレイ、読了しました。

前回のブログで途中経過を記載しましたが、ラストは生みの感動というよりも、人として一歩成長する主人公の姿が強く描かれています。
人ひとりの世界を作り出す、という感動と世界を作ったことにより、自分の世界を作り出してくれた親に心から感謝する。
それが家族ができるという醍醐味なのかもしれないと思いました。


ここからは個人的な話。
私は昨年、祖父を二人失い、特に近くでずっと過ごしてきた祖父が亡くなったことはショックというか、信じられない気持ちしかありません。

そんな祖父の嫁である、わたしの祖母は、祖父とは再婚である。
祖母の前の旦那は、祖父の弟。
祖父の弟は結婚間もなく、病死した。

わたしがその事実を知って、そして理解したのはほんの最近のこと。

亡くなった祖父の日記には「悲しみにくれる祖母の姿を見ていられない。この人を守らなくては」という決意が書かれ、
一方の祖母のアルバムには「なんでこんな早く亡くなるの?せめて子供がほしかった」と、辛さが淡々と書かれているのだった。

そんな祖母と結婚し、三人の子、そして孫をもうけ、50年以上も大切に家族を守ってきた祖父。
その祖父の想いをついで、祖母を今、わたしの母が守っている。

祖父の死はただ悲しいだけではなく、
祖父がいて、祖母がいるから自分たちは生まれ、出会ったということを改めて感じ、深く、深く感謝をした。

この想いを忘れず、自分は世界をつなぐ責任があると今、思っている。

マタニティ・グレイという作品の「命の誕生」と、自分の祖父の「死」から、世界や家族のつながりを考え、その尊さを感じた。

次は自分が世界を生む人になりたい。

言葉には鬼を哭かし、点を動かす力があるという。

『マタニティ・グレイ』石田衣良

3日ほど前から、通勤・お昼休みを利用して読み始めました。
今、4分の3読み終わったところです。

◆なぜ、この小説を手に取ったのか
あらすじから、自分の境遇に近い主体者だと思ったから
*仕事中心生活であり、旦那が料理上手で家庭的という点。

◆途中経過の感想
これ、ほんとに石田衣良さんの作品?
と何度か立ち返って、筆者名を確認するほど、ギャップを感じます。
というのも、池袋ウエストゲートパークのイメージが強かったため(しかもドラマ)、こんなに女性視点で、心情も景色も描ける方なのだと、知らなかった自分を恥じました。

バリバリ働く女性と、それを支える旦那の穏やかな心がとても暖かく、世間体がどうであれ、自分たちで自分たちの家庭を作っていくのだ、という固い絆を感じます。
それに相まって、風景描写が本当に美しい。目の前に、青空や夕焼けがリアルに描ける。
マタニティものには珍しく、性描写も多々あるのですが、それがいやらしくなく、家族間の愛情として暖かく描かれているのも魅力のひとつです。



結末が楽しみ!
読み終わったら、総括的な感想を書きます。もちろんネタバレなし。